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評者◆片岡大右
人生の時間とその後――あらゆることが起こりうるのだということを知っている芸術家、クリスチャン・ボルタンスキー
No.3412 ・ 2019年08月17日




■「キリスト者」という名のユダヤ人

 ナチス・ドイツによる占領下のパリ、大邸宅の立ち並ぶグルネル通りの一角で、近隣に聞こえるほどの夫婦喧嘩が夜中に始まる。医師である夫――オデッサ難民の息子のユダヤ人――は失踪し、コルシカのカトリック的ブルジョアジーを出自とする妻は離婚の手続きを取る。彼女のもとに残された二人の息子のうち、まだ二、三歳のリュック=エマニュエルは父の突然の不在に苦悩する。けれど九歳上の長男ジャン=エリーは、母に打ち明けられた秘密を共有して、パリ解放の時まで父を守るため力を尽くすだろう――偽装された喧嘩と出奔ののち、彼は床下での潜伏生活を始めていたのだ。「でも時々は出てきたらしい。だって僕をつくったんだからね」――一九四四年九月六日、前月の〈解放〉の直後に生まれ、クリスチャン=自由と名づけられた第三子は、父母の冒険をこのように振り返っている(『クリスチャン・ボルタンスキーの可能な人生』佐藤京子訳、水声社、二〇一〇年、第1章。以下、美術史家カトリーヌ・グルニエを聴き手とするこの自伝的著作の引用に際しては、数字で章を示す。なお後掲『隠れ家』によると、父は狭隘な空間に身を潜めていたにせよ、つねに床下にいたわけではないようだ)。
 まずは戦後に作家となった母の小説につづられ、つい...







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